【新銀河系軍団の誕生とさらなる進化を求めるバルサ】
-結果-
リーガ 12節 カンプ・ノウ
バルセロナ 1-0 レアル・マドリード
リーガ 31節 サンティアゴ・ベルナベウ
レアル・マドリード 0-2 バルセロナ
-試合内容-
未完成な白い巨人
監督メンバー共に、大きく変化した新生レアルマドリード。
ただ、新しく生まれ変わった分、クラシコにおいてはまだ何か完成されたサッカーをみせつけるまでには至らなかった印象だ。
ペジェグリーニの得意としたパスサッカーは、バルセロナを相手にした時にそこまで高いレベルをみせることは出来なかった。
それでも、新たなメンバーは個人の力を発揮して相手を脅かす雰囲気を常に纏っていたように感じた。ロナウドやカカといった選手の個人での打開やアロンソの落ち着いた展開は、新たな武器として加わっている。
全体の内容としては、集中力を高く持ち、昨シーズンより拮抗した試合を展開した。
王者の風格
中盤の支配をベースにしていて、最前線での圧倒的な個人技での違いではなく、ディフェンスから中盤にかけてのところで、イニシアチブを取ることをベースとしている。
第2戦では、メッシを0トップの位置を取らせることで、自由度を高めながら試合の主導権を取る狙いをもっていた。
中盤での数的有利を至る所で作り続け、バルサらしいサッカーを展開した。
またピケの定着などで、DFラインもボール運ぶ選手も増え、より現代的なプレーを感じさせた。
メッシを筆頭に、イニエスタやブスケツなども自信を感じるプレーで風格を漂わせ、その余裕はプレーへも影響を与え、素晴らしいボールスキルを発揮し、みるものを楽しませるサッカーを披露した。
-背景とメンバー構成-
新たな銀河系軍団と共に
また新たな波がやってきた。
フロレンティーノ・ペレス会長の復職だ。銀河系軍団を作り上げた張本人の復帰は、レアルに大きな変化をもたらすものとなった。
前回の就任時と同様に大胆な大型補強を打ち出したが、前回と異なるポイントが2点あった。
1つ目は、豪華な補強を1年でやってのけたところ。前回は1年に1人ずつスター選手を連れてきていたが、今回は数人のスター選手たちを同時に獲得してみせた。
クリスティアーノ・ロナウドとカカという2人のバロンドーラーを同時に獲得。
他にも、中盤の要としてすでに世界的な選手となっていたシャビ・アロンソ、若きFWのエースであるベンゼマ。彼ら世界的なスターをそれぞれのポジションに同時に加えるのは、過去に例をみない試みであり、大きなインパクトを世界に提供した。
そしてもう1つのポイントとして、前回の反省も踏まえてなのか、ディフェンスラインにも実力者を迎えている。
若く有望視されているアルビオルと実力者であるアルベロア。2人のスペイン人を獲得した。
自国の選手を軽視しない点も変化のみえるところなのかもしれない。
また、しっかりと収支のバランスも考慮しながら、人員整理も行った。
多く抱えていたオランダ人を中心に選手の放出に踏み切った。今後主力としても期待されていたロッペンやスナイデルなども見切りをつけるなど、こちらも強気な姿勢をみせた。
そして彼らスター軍団を束ねる指揮官ペジェグリーニも新たに加え、万事整った。
レアルマドリードというブランド価値、プライドを取り戻すための変革をもたらすことで、前シーズンまでの悪い流れを断ち切り、永遠のライバルとの差を一気に縮めるべく、新たなプロジェクトをスタートさせたのだ。
そんな中でも目玉は、クリスティアーノ・ロナウドだろう。彼の獲得は何よりも大きなものとなった。
レアルという巨大な組織に誰よりもマッチしたロナウドは、圧倒的な個人のフットボールの能力で大きくチームを変えてみせた。
ビジネス観点からみても、端正な顔立ちで広告塔となり、多くのファンの獲得に貢献した。
ロナウドの入団発表には、ホームスタジアムに約10万人のファンが集まり、それまで最多であったマラドーナのナポリ移籍時の7万5000人を大きく上回り、史上最多となっている。
また、マドリード市内だけで120万枚ものユニフォームを売り上げ、高額な移籍金を地元のユニフォーム売り上げのみで回収したとされていて、ピッチ外での貢献も計り知れない。
そんなロナウドを筆頭に、新銀河系軍団とも称されたレアルマドリードの豪華なメンバーが誕生したシーズンとなった。
ベースを築き、さらなる進化を続ける
ベースのサッカースタイルを築き継続する中で、変化を加えながらさらなる進化を試みたのがこのシーズンのバルセロナであった。
まず、補強に関して大きなところは、イブラヒモビッチの獲得だろう。
獲得のトレード要員として、長年バルセロナの絶対的なエースとして活躍してきたエトーの放出も大きな決断だが、なんともペップらしい判断だ。昔の空気の残る選手を取り除くかのようにエトーの放出を決行した。
ただ、ここに迎え入れるのがイブラヒモビッチという強烈なキャラクターをもつ選手である。
世界でも1、2を争うCFであるが、バルサのサッカーに適しているのか不安も感じるような補強であったのも間違いない。
そして、また1人カンテラからペドロをトップへと昇格させた。
持ち前の器用なボールスキルに献身性や忠誠心。バルサらしい選手である。
選手だけでなく、戦術面も新たな試みをみせた。
メッシをCFの位置に置くことで、0トップシステム(純粋なCFを置かない戦術)を導入した。
メッシに自由度の高いポジションを与え、攻撃の組み立てからフィニッシュの部分まで幅の広い役割を担わせたのだ。
パスの思考、カンテラーノを中心としたところに大きな変化はなかったが、昨シーズンの三冠を経験していながら、進化を求める探求心はペップという指揮官の非凡性を表している。
-まとめ-
全体の内容としては、昨シーズンよりも拮抗したものとなり、チームとしての戦い、個人の戦い、共に見所満載であり面白みが増してる。
大きな変化としては、やはりレアルの大型補強だろう。
これにより両チーム共に、世界選抜同士の試合かのようなメンバーを抱え、メンバー表をみるだけでも、一日中でも議論出来るようなスターたちが揃っている。
世界の中心がこの2強となり、そんな両者の対戦であるクラシコは贅沢の極みと言えるだろう。
そして何と言っても、この先何年もNo,1を競い合う、メッシとロナウドが揃った。
レアルマドリード、バルセロナという2つのチームの対戦であるのは間違いないが、この2人を中心にみることも今後のクラシコならではの楽しみ方だ。
サッカー界において、10年近くに渡り二人のプレーヤーが高次元のNo,1争いを繰り広げることは、後にも先にも起こり得ないことではないだろうか。
そんな変化のある中で、忘れて欲しくない部分も伝えたい。ベテランと言われる往年の名プレーヤーたちの存在だ。
カシージャスは、時代についていけないかのようにロングパスを選択し、アンリはぺぺのスピードに圧倒された。新たな時代の流れに飲み込まれるかのようになるさまは、クラシコを通じてみることができる部分でもある。
ただ、それでも彼らベテランの繰り出す技は、光るものがある。カシージャスのセービング、アンリのスピード、グティのパスセンスにプジョルの読み。
そんな選手たちの存在が歴史を作ってきていて、最後まで輝きを放ち続けている。
忘れることなく、名選手のプレーを伝えるのもクラシコを読み解く上で欠かすことの出来ない部分である。
ロナウドと共にレアルマドリードの物語は大きく動き出し、クラシコ4連勝を飾ったペップバルセロナを相手にどのような反撃をみせていくのかますます楽しみである。
原稿 ヒロ
編集 クラシコの部屋運営