2008-2009 総括

ペップ政権の序章と暗雲立ち込めるレアル】

-結果-

リーガ 15節 カンプ・ノウ
バルセロナ 2-0 レアル・マドリード

リーガ 34節 サンティアゴ・ベルナベウ
レアル・マドリード 2-6 バルセロナ

-試合内容-

華麗なフットボールの始まり

 バルセロナらしさを”魅せる”フットボールの始まりだ。

 選手間の距離を近く保ち、サポートの質を担保しながらボールをしっかりと繋ぎゴールに迫っていく。
ディフェンスラインを高く設定することで、攻守両局面においてコンパクトな状態を常とし、攻守の切り替えの早さも加わることで、全体の連動感は増している。

 また個人としての能力の高さも見せ付けている。クラシコ第2戦目は特にオープンな試合になっていたので、その部分は顕著にみられた。

新たな戦術と共に、プレーに自信を感じ、自信が余裕を生み、その余裕が違いを生む。

ボール保持率を高め、相手選手の体力と共にメンタル的な部分までダメージを与えたようにすら見えた。

何か物足りなさを残したレアル

 ホームとアウェイでの戦い方に大きく変化を持たせた。

 アウェイでの第1戦では、決められた戦術の下、守備を意識しながらの鋭いカウンター攻撃を試みた。共通認識を持ち、相手ゴールを脅かす場面もありながら、決定力の無さを露呈した。

 ホームで迎えた第2戦、大敗となったが調子の良いバルサ相手に真っ向勝負を挑み、攻撃的なサッカーを展開した。
チャンスも作り攻め込む場面もあったが、時間の経過と共に自力の差が顕在化したように思える内容であった。

 局面を個人で打開し、違いを生み出せる選手がみられなかったのは、レアルというチームにおいて物足りない部分なのかもしれない。

どちらの試合も点差で見るよりも接戦だったように感じる。第2戦の後半以外は、やることが徹底されていたし、チャンスも作り出していただけに相手を褒める他ない。

-背景とメンバー構成-

新たな黄金期の幕開け

 ジョゼップ・グアルディオラ。

バルセロナを語っていく上で、欠かせない人物がまた一人登場したシーズンである。

 ペップとして親しまれるこの監督は、2007年からバルセロナBの指揮官として監督キャリアをスタートさせた。そして監督2年目のこのシーズンからトップチームの監督を任されたのだ。

Josep Guardiola by Tsutomu Takasu (CC BY 2.0)

 昨シーズン低迷していたバルセロナは、この若き監督を抜擢するという大きな決断を下したのだが、これほどのビッククラブにおいて、監督として実績のないペップを選んだのには不安があっただろう。

ただ蓋を開けてみると、トップチーム就任1年目にして、リーグだけでなく国内カップのコパ・デル・レイ、CLも優勝し、スペインクラブ史上初となる3冠を手にしている。

この上ない結果と共に、バルサらしいフットボールも復活させてみせた。ただ勝つだけのサッカーではない、魅せて勝つサッカーを展開した。

 メンバー構成に関しても大胆なテコ入れを図った。ロナウジーニョの退団である。

クラブの象徴であった選手との別れに踏み切り、中核であったデコやエトーの構想外も就任時に宣言していたのだ。エトーは残留したものの、大きな変革を一気に進めた。

 また、その中核だった選手の代わりを担ったのが、カンテラ出身の選手というのがペップらしいところだろう。ピケをイギリスの名門クラブから呼び戻し、ブスケツをBチームから昇格させた。

この先何年もバルサの中核を担うプレーヤーたちを見出している。

ペップ自身もカンテラ出身であり、だからこそバルセロナのDNAを持つ彼らへの信頼を強く持ったのだろう。

補強の失敗で大きな壁にぶつかる

 2003年以降、久しぶりに2シーズン目を迎えられた監督となったシュスターだったが、クラシコを4日後に控えたシーズン途中に解任となっている。

この年の補強は問題があったのかもしれない。
クリスティアーノ・ロナウドの獲得失敗とロビーニョの退団。大きなトピックとしてはここだろう。

C・ロナウドの獲得に執着したあげく、最終的に合意に至らなかったのだ。
また、その際に交換要員として扱われたロビーニョが不服に感じ退団。
前年にはゴール数も増え、中核になっていたロビーニョをチームに留めることが出来ず、彼の代役も獲得できなかった。

 個人での打開、決定的な仕事を出来る選手の不在感は否めなかった。

実際にクラシコ第1戦目は、守備からのカウンターで良いサッカーを展開したが、そのカウンターを完結させる選手がいなかった。

個人で組織を破壊できるタレントがいるのといないとでは、相手に与える脅威が変わってくる。

Real Madrid team line up by Tsutomu Takasu (CC BY 2.0)

 また、もう一つ構成でのポイントとしては、オランダ化が進んでいたことも言える。

ファンニステルローイ、ロッペン、スナイデル、ドレンテに、ファンデルファールトとフンテラールを加えた計6人もオランダ選手を抱えていた。

監督がオランダ人監督でもなく、そこにはどのような狙いがあったのか読めないが、オランダらしいサッカーを展開していたかといえばそうではなかった。

 前シーズンが良い結果だっただけに、わかりやすい変化を進められなかったことが、結果論ではあるがうまく機能しなかった要因の一つなのかもしれない。

新たなリーダーを必要としているのは間違いないだろう。

-まとめ-

 変革と継続。バルサには変革があり、レアルには継続があった。

 前者は、その変革を機に大きな偉業を手にした。クラシコを2連勝を飾り、3冠も達成している。
見るものを魅了するフットボールを展開し、勝利をものにする。スポーツにおいて誰もが目指したいと思わせることを体現してみせた。
ペップと共に生まれ変わったチームは、バルセロナファンを熱狂の渦に巻き込んだ。

 後者は、継続性はみせていた。戦術を用いてやることを遂行する部分は、前々シーズンから続けているように感じる。
ただ、その精度が向上しているのかと言われると、現状維持を続けてきたようにもみえる。現状維持は衰退を意味すると言われるが、まさにその言葉が合うかのように、サッカーというのは日々進化し続けている中で、進化や積み重ねをみることができなかった。

 前シーズンの総括などでも振り返ったのだが、バルサが継続性の難しさを示していた。レアルが変革の成功をみせていた。立場が逆転している。

この両チームを振り返ると、お互いに変化と継続を続けているのだ。
ライバルとはこういうことなのだろう。

どちらかが変化をみせ、それがもう一方のチームの変化への原動力となり進んでいく。これを何十年、何百年と続けていく。クラシコという永遠のライバル関係を追うことでみえてくるものであり、毎年のように変わるお互いの関係性をみることも醍醐味だ。

原稿 ヒロ
編集 クラシコの部屋運営

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