2007-2008 総括

【カンテラーノの奮闘とライカールト長期政権完結】

-結果-

リーガ 17節 カンプ・ノウ
バルセロナ 0-1 レアル・マドリード

リーガ 36節 サンティアゴ・ベルナベウ
レアル・マドリード 4-1 バルセロナ

-試合内容-

花道を作らせた戦いぶり

 前提として、1試合目と2試合目の内容差がありすぎるシーズンではあった。
レアルにとっては、どちらの試合も勝利を納め、2シーズン続けて継続性を持ち、良い結果を残してみせた。

1試合目は、守備の意識の高さや割り切ったカウンターの攻撃など狙いを持った戦い方で試合を展開。

2試合目は優勝が決まっていたので、ピッチに入る際、バルセロナの選手たちに花道で迎えられる入場となった。レアルがその”余裕”を存分に楽しみバルサを圧倒する内容だった。確実にボールを繋ぎながらゴールまで運び、多彩なフィニッシュをみせた。ベテランと若手が融合し、楽しさを感じさせるサッカーを披露していた。

カンテラ出身者の活躍

 個人のプレーに終始していて、イニエスタやメッシなどの個人の能力の高い選手のプレーは目立ったが、チームとして連動する場面が少ないシーズンだった。

特に2試合目はライカールトもほとんど退任が決まっていたのか覇気もなく、選手たちも何か意地を示すことはなかった。

伝統的なパスサッカーはなりを潜めたが、前シーズンに引き続きメッシやイニエスタなどカンテラーノは確かな力を示し、今後を期待させるようなパフォーマンスを見ることができたのは収穫だろう。

-背景とメンバー構成-

ベテランの活躍

 シュスター新体制になり、前のシーズンの良い部分を巧みに取り入れながら、ベテランと若手がうまく融合した布陣となっていた。

グティ、ラウル、カシージャスを中心にレアルの生え抜きのベテランプレーヤーが先陣を切ってチームを引っ張っていたのは印象的だった。

 また、前シーズンを最後にベッカムとロベカルという銀河系を象徴する最後の選手が抜け、ぺぺ、ロッベン、スナイデルなど若くして即戦力となり得る実力者を迎えた。

 スナイデルやロッベンは確かなスキルでファンを魅了し、前者はそのキック制度、後者は圧倒的なスピードを兼ね備えるなどと、個で違いをみせられるレアルの新たな武器となっていた。

 そんな中でも一際存在感を放っていた新加入選手はぺぺだろう。

今ではダーティーなイメージの強いぺぺではあるが、ディフェンスとしての能力は疑いようがなく、今後レアルを支える存在であることを加入1シーズン目から示していた。銀河系時代から言われてきたディフェンスの弱いレアルというイメージは彼の加入から払拭されている。

レアルは、堅実に、そしてチーム第一を体現するメンバーたちが揃っていた。

 ただ、圧倒的な個のスーパースターの不在はレアルらしさに欠ける部分であったのは否めない。

レアルという巨大なクラブにおいて世界的な名前、スキル、容姿まで踏まえた広告塔になる選手の不在というのは、気になる部分である。
もちろん各ポジションにそれぞれ実力者が存在するので、贅沢な悩みではあるが、それがレアルというクラブの宿命でもあるのも否定できない事実なのだ。

長期政権の難しさ

 昨シーズンの失敗からチームにやや変化を加えた。

アンリというプレミアリーグの怪物を加えたのだ。
前線にはロナウジーニョ、エトー、メッシ、アンリというスーパースター4人を揃え、コミック漫画になぞらえたファンタスティックフォーと言われるメンバーとなった。

Thierry Henry by funnydae (CC BY 2.0)

 また、前シーズンではイニエスタなどが務めていたりと、なかなか見つかっていなかったアンカーポジションの適任者探しにも着手し、ヤヤトゥーレも加入している。

 チーム内での競争を起こし、空気の入れ替えを試みるにはとても良い補強に見えたのだが、結果の伴うものにはならなかった。
ロナウジーニョという絶対的なエースの怪我や低調なパフォーマンスなども低迷するチームの大きな一つの要因になってしまった。

 それでもこれほどのスーパースターたちがいることは、本当にワクワクを提供しているし、それだけでエンターテインメントであるといえる。
何をしてくるのだろうと期待感を常に持てるメンバーは備えていた。

 ただサッカーというスポーツは、レアルの銀河系の時もそうだが、スーパースターを獲得するだけで全てが好転するほど簡単なスポーツではない。
同じ監督での長期政権というのは、大きく揺らぐことが少ないかもしれないが、常に上向きにチームが進むわけもなく、空気の入れ替えや戦術の変更、目標の再設定など、取り組むべきポイントは多く、難しさを露呈するものとなった。

-まとめ-

 レアルが2勝する形となったこのシーズンのクラシコだが、”組織のバルサ”と”個のレアル”のような構造はこのシーズンでは逆転している印象だった。

2002/03デルボスケ退任以降、監督の短期政権が続いてきたレアルにとっては、久しぶりの充実感のあるシーズンになったと言えるだろう。
得点、失点ともにリーガ1位であり、数字と内容ともに力を示すことが出来た。

 バルサは前シーズン同様、ネームバリューでレアルを圧倒していたのにも関わらず、この結果になってしまっているのだから、指揮官の変更を考えるほかはないことをクラシコ、シーズン成績共に示すものだった。

 ただ、ライカールトにとって、最後のクラシコがレアルに花道を作る形となってしまったが、ライカールト政権下ではロナウジーニョと共にリーガ、CLを制すというクラブにとって大きな成功をもたらしているのも忘れることは出来ない偉業だろう。
また、メッシやイニエスタなどカンテラーノの積極的な着用もバルサの今後の礎を築くこととなり、世界中のファンを大いに楽しませてくれた。

原稿 ヒロ
編集 クラシコの部屋運営

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