2006-2007 総括

【カテナチオなレアルと新旧エースが輝くバルサ】

-結果-

リーガ 7節 サンティアゴ・ベルナベウ
レアル・マドリード 2-0 バルセロナ

リーガ 26節 カンプ・ノウ
バルセロナ 3-3 レアル・マドリード

-試合内容-

スペインの地でのイタリアンなフットボール

 レアルマドリードは、イタリア監督のカペッロを迎え入れ、全体でブロックを作りカウンターなど、やるべきことをやるチームとなった。
 選手選考の段階で、しっかりとチームのために走れる人間を使っている印象があり、守備の改善に限らず、中盤がボールを引き出しタメをつくる動きが増えたりと、個には頼らないサッカーを展開していた。
ガゴやグティのような選手が中盤ボランチなどにポジションを取ることで、繋ぎの部分でのアレンジや丁寧なパスなども今までのクラシコにはあまりみることができなかったプレー。

得点も豊富なパターンをみせ、華麗とまでは言わないが、確実に強さをみせつけた。

連動性を欠いたバルセロナ攻撃陣

 一方バルセロナは、断続的なプレーの多さを感じる内容だった。
個人の力が飛び抜けているため、個に頼るサッカーになってしまったのかもしれない。

 1試合目は、ロナウジーニョのパッとしないプレーに引きずられるようにバルサも沈黙した。
ただ2試合目は個が輝き、ロナウジーニョの強引なプレーでレアルの守備陣を混乱させ、もう一人の小さな怪物メッシがハットトリックを記録し、スコアをイーブンに持っていった。

-背景とメンバー構成-

会長の交代とイタリア人指揮官

レアルにとって、ペレス会長からカルデロン会長になったことは大きな変化だろう。
ペレスという会長は銀河系軍団を作り上げた張本人であり、その彼が退いた後の最初のシーズンである。

そんな新しいレアルの会長であるカルデロンの進めるプロジェクトは良い方向に向かったと言えるだろう。

 まず最初に着手したのが、監督のチョイス。ファビオカペッロという結果主義者を招聘した。
カルチョスキャンダルによってやってきたイタリア人監督であるが、何よりも守備を第一に考える監督であった。

Fabio Capello by Steindy(CC BY-SA 3.0)

 カテナチオ。サッカー界においてこの言葉は、守備的な戦術を表現する際に広く知られた言葉であるが、この言葉とは無縁なレアルにこのような考え方をまず植え付けるべく、トライした。
 崩壊したレアルマドリードのスタートとして、まず最初に守備面の見直しを行ったのは懸命な判断だったと言えるだろう。

 また、このシーズン加入してきた選手たちについて見ても堅実さが伺える。

 カペッロと共にイタリアの名門ユベントスから、カンナバーロとエメルソンなど、ディフェンス面で力を発揮する実力者を迎え入れた。
 それに加え、ファンニステルローイなどの経験豊富な計算のしやすいベテランも獲得することで、大幅な人員変更をみせながら大きくブレなかったフロントの仕事ぶりは秀逸であった。

そして、イグアイン、ガゴ、マルセロなど南米で活躍をしていた将来有望な若手も同時に補強するなど、短期と長期的な視野を持ち、スーパースターの獲得に大金を注ぎ込むのではなく、満遍なく欠点を埋めていくような素晴らしい補強を行った。

ペレス会長によるインパクト重視の印象が強かったレアルから一転した経営戦力をみせた。

Higuain , Marcelo by Jan S0L0
(CC BY-SA 2.0)

継続性の難しさ

 バルサは昨シーズンチャンピオンズリーグ、リーガ制覇など大きな成功を収めたチームなので、大幅には変わらなかったが、レアルと同様にユベントスからテュラム、ザンブロッタという実力者をしっかりと連れてきていた。

 ただ、結果論にはなってしまうかもしれないが、バルサというチームにおいて、イタリアのメソッドはあまりに合わなかったのかもしれない。
守り方の違い、ボールをつなぐことが求められるバルサのディフェンダー像に苦しんだテュラム、バルサスタイルに馴染めないザンブロッタ。

 DFラインに加わった2人だが、クラシコで合計で5点も取られているところをみると結果としても決して好ましい数字ではない。

 前線にも目を向けてみると、ロナウジーニョ、エトー、メッシのような地位の確立された選手たちを脅かすような選手が誰もいなかった。彼らに代わる選手を見つけるのはあまりに酷ではあるが、怪我のエトーの代役として出場したグジョンセンの役不足感は否めなかった。

 また、中盤での相手を圧倒するようなパスワークは生まれず、シャビやイニエスタをアンカーに使ったりと、依然としてアンカーに安定をもたらすプレーヤーの不在を感じさせた。

Gudjohnsen by Darz Mol (CC BY-SA 2.5 ES)

まとめ

 このシーズンは、イタリアスキャンダルによりユベントスの選手がリーガの2強に多く流れてきた。新天地へ活躍の場を求めた選手たちの多くがこのスペイン2大クラブを選ぶのだから、両クラブの世界的な知名度であり、価値を感じるものだった。

クラシコでこの両チームを追うということの面白さをこのような選手の獲得合戦にも感じることが出来た。

 試合内容に関しては、バルセロナが前シーズンに続きレアルを圧倒するかと思われたが、しっかり対策をしたレアルに思うようなサッカーは出来ず、逆に堅実な戦いをみせたレアルがトータルスコアで上回った。

 最終的にこの両者が勝ち点で並んだリーグ戦は、クラシコでの直接対決のトータルスコア5-3という差によってレアルが優勝カップを手中に収めた。

リーグ戦全体での成績では、得失点差がレアル+26、バルサ+45とバルサが圧倒していたのだが優勝はレアル。
毎年のように世界最高のこのリーガエスパニョーラで1、2位を争う両クラブにおいて、このような出来事からも、クラシコという直接対決の結果の重要性が如実に表れたシーズンであった。

 レアルは、現在のサッカーで死語にもなりつつあるカタナチオのような完璧な守備を存分にみせていたとは決して言えないが、堅実に勝ちにいく姿勢は新鮮であり、チーム構築を着実に進めていこうと考えるフロントとの意思にもリンクしたような戦い方だったと言える。

 ただ、銀河系からの脱却を見事に果たし、最高の結果を残したようにみえるのだが、レアルのスター不在は、物足りなさを感じずにはいられなかったのも確か。「メンバー構成」はクラシコという戦いにおける見所の一つだ。

また皮肉なことに、このシーズン終了後、守備的でスペクタクルさに欠けるカペッロの采配はマドリディスタに受け入れられることはなく、優勝を置き土産にチームを去った。
これもまた、レアルというクラブの難しさ、伝統を象徴するような出来事であった。

 一方バルサは、両翼に怪物を擁し、全体のネームバリュー的にも明らかにレアルの上を行くが、試合結果はそうはならなかった。ネームバリューなどから考えると明らかにバルサ優勢だったが、堅実なレアルに勝利を手にできなかった。

だが、新旧のエースの活躍をみることはできた。
前シーズン同様にロナウジーニョとメッシというエース二人はやはり巨大な力を示す存在であった。

メッシのクラシコでのハットトリック。
ロナウジーニョやロナウドでさえ、クラシコでのハットトリックは記録しておらず、過去に達成した選手も数えるほどであり、そんな誰もが真似のできるものではない芸当をまだ当時20歳にも満たない選手が達成している。

しかし、この結果の背景にはロナウジーニョというタレントにより切り開かれたことを忘れてはならない。結果をみるとメッシにフォーカスされる部分はあるが、内容に目を向けるとロナウジーニョという天才も大いに違いをみせつけていたのだ。

ロナウジーニョが活躍することでメッシも活躍した、そんな構図があったからこそメッシの成長を助け、このハットトリックにも導いた。この記録は、この二人の関係も含め、記憶しておくべきトピックでもあるのだ。

原稿 ヒロ
編集 クラシコの部屋運営

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