【魔術師のダンスと銀河系の崩壊】
-結果-
リーガ 12節 サンティアゴベルナベウ
レアル・マドリード 0-3 バルセロナ
リーガ 31節 カンプノウ
バルセロナ 1-1 レアル・マドリード
-試合内容-
銀河系の限界を示すフットボール
またしても特に何かを示すことはなかったレアル。
2シーズン続けてのこのパフォーマンスは変革を必要としていると言わざるを得ないだろう。
前シーズンと変わらずに守備で何か明確な意図があるわけでもなく、攻撃で組み立てのために工夫もない。前線でタメを作る選手が不在であり、幅も作れていないので攻撃が単発になる場面が多く見受けられた。
ディフェンス、ボランチの選手の展開力のなさが目立ち、時間を作るための横のパスもなく、ボールを持ち運んで独力での打開をすることも難しい状況。
サポートの質の悪さや連動性の乏しさから、戦術的に何かを読み解くことの難しいサッカーを展開していた。
最強の3トップの形成
バルサは3トップの選手たちの破壊力が増していた。
メッシという存在の登場だ。エトーとロナウジーニョの個人のスキルはすでに証明されていたが、さらにその一角にとんでもない左利きの若者が入ってきた。
多彩な動きや周りとの連携などで怖さを見せていたジュリが存在したが、将来の世界のスーパースターは自分の力でより怖さをみせるタイプ。
この若者の登場で、3トップ誰にボールが入っても相手に脅威をみせつけていた。
チーム全体としては、常にボールを保持するようなパスワークではなかったが、レアルを攻め立てていたのは間違いない。
より個人の力が目立つようなサッカーではあったが、みるものを圧倒するようなサッカーを繰り広げていた。
– 背景とメンバー構成 –
巨大になりすぎた選手たち
レジェンドたちをベンチに下げられずにいる。
チーム編成として、空気の入れ替えを怠ったことによる試合内容になったと言えるだろう。
選手の衰えは明らかであり、その編成へ待ったをかけられる程の監督を用意することも出来なかった。
ただ、選手と同じ立場で語れる実績を持つ監督を招聘することの難しさも確かである。
数々の栄光を勝ち取ってきた選手たちだからこそ、プライドやビジネス的なしがらみも絡んでくることで、その扱いはフロントと監督含め難儀なものだったと推測出来る。
フロント、監督、選手、全てに置いてアンマッチを感じるシーズン。華やかな選手たちを揃えれば勝てるほど、サッカーはそんなに甘くないものだ。
ただ、そんな中でも評価する点も存在する。将来有望な若手の獲得に動いていた点だ。
セルヒオラモスやロビーニョ、カッサーノ、バチスタといった選手たちを迎え入れることで若返りを図り、世代交代としてはうまく行かなかったが、確実に未来への投資も始めていたのは見逃すことの出来ないポイントである。
個のエンターテイナーたち
メッシのトップチーム昇格。このシーズンのトップニュースである。
今後のバルセロナに限らずサッカー界を語る上でも、欠かすことの出来ない抜擢人事である。
試合を通してみても、明らかにこのティーンエイジャーに目がいく。
大学生のような年齢でありながらクラシコ初戦で、数多の経験をしてきたレアルのスター選手たちを翻弄してみせた。メッシのみせつけたポテンシャルは、ただの大学生がやってのけるものではなかったのは明らかだ
フォーメーションに関しては昨シーズンのメンバーを中心に4-3-3を形成したが、中盤の底のアンカーポジションは昨シーズン同様に適任を探している段階のように感じた。
中盤の底の位置でボールを引き出し、相手のボールを素早く回収し、試合をコントロールする選手。今後どのような解決策を持ってくるかは見所である。
また話は戻るが、なんといってもこの2人がいることに心踊る。
メッシという怪物と天才ロナウジーニョ。
この2人が同じピッチに立っていたと思うとサッカーを知っているものならワクワクせずにいられるだろうか。
異なる方法ではあったが、それぞれの時代の世界のサッカーを間違いなく席巻してみせたこの2人が同じピッチに立っているのだ。
昨シーズンみせたような流れるようなパス回しは鳴りを潜めたが、個の台頭がチームをさらに上のステージへ導いている。
–まとめ-
この年はバルサの強さを感じる年だった。
結果から見てもリーガ、CLの2冠を達成するなど異次元の強さを誇っていた。
長いクラシコの歴史の中でも印象深いシーンの1つも生まれている。
ロナウジーニョというスーパースターが敵地サンティアゴベルナベウでレアルのスーパースターたちに引導を渡した2つのゴールシーン。
本拠地サンティアゴベルナベウに集まったレアルのホームサポーターたちが席を立ち、拍手をロナウジーニョに送ったのだ。レアルの選手たちに向けての最大級の皮肉が込められたこの拍手は歴史的な瞬間となった。
結果としての差は感じるシーズンではあったが、見所の多いクラシコであったのは間違いない。
このシーズンの後のレアルの巻き返しやバルサのさらなる進化など、どのシーズンを切り取っても注目するポイントが止むことはないだろう。
原稿 ヒロ
編集 クラシコの部屋運営